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肩関節学会40年史

福田宏明先生

(文責 内山善康)

物故年月日:2008年9月30日

 福田宏明先生は1961年に慶応大学医学部を卒業。1969年より肩関節外科を学び1974年に東海大学に移られました。1978年からのアメリカ留学においてコロンビア大学Charles S. Neer II先生のもとで多くの先進的治療を習得し帰国されました。その後1982年には日本人で初めて「the American Shoulder Elbow Surgeons」のcorresponding memberに推薦され活躍されています。1984年に東海大学教授になられ、同年には第11回日本肩関節研究会の会長と第2回日北欧肩関節学会の会長をお勤めになっています。
 東海大学在職中においては基礎・臨床医学研究とも積極的に行い、特に「腱板不全断裂」においては多くの業績を残され1)、世界における腱板不全断裂研究の先駆者と言っても過言ではありません。特に福田先生の名前を有名にしているのは「Ring Retractor」の開発です2)。現在の肩関節手術において無くてはならない最重要の手術器械の1つですが、海外の肩関節外科医達はこれを「Fukuda Retractor」と呼び福田先生への敬意と尊敬を表しています。このエピソードからもお分かり頂けるように日本国内は素より世界中に多くの肩関節医学情報を発信し、日本の肩関節外科の発展と成長を牽引した功績者の一人であります。
 福田先生は常に我々に「①整形外科と内科の古典と最近の論文を読みなさい、②信頼できるメンターを探しなさい、③独創的なオリジナリティーを持ちなさい、④海外で発表しなさい、⑤論文はpeer review journalに英語で投稿しなさい、⑥国際的意識を養いなさい。」とおっしゃっていました3)。これが我々肩関節外科医が目指す道なのでしょう。

1)Fukuda H :Partial-thickness rotator cuff tears: a modern view on Codman's classic; J Shoulder Elbow Surg, 9(2): 163-168, 2000.
2)Fukuda H, Mikasa M, and Ogawa K: Ring retractor; A new humeral-head retractor. J Bone Joint Surg, 64-A: 289, 1982.
3)Fukuda H and Mikasa M: Trends in modern shoulder surgery: personal observations. J Orthop Sci, 12:4-13,2007

福田宏明先生