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肩関節学会40年史

第19回肩関節学会

会長
田畑四郎

 日本肩関節学会の会長に推挙されてまず最初に、会場を何処にするかで頭が真っ白になりました。当学会の県庁所在地以外での開催は、初めてでありしかも当地にはこの様な学会を開けるような施設が全くありませんでした。
 いわき市はもともと中核となる街が発展して大きくなったものではなく、1974(S41).10.1一市29町村が合併して出来た市です。鉄道の駅を中心とする商業中心の平・漁港が中心の小名浜・常磐炭鉱と温泉中心の湯本などを寄せ集めて出来た街のため学会を開催する文化施設は皆無でした。
 幸い大きな結婚式場が建設予定との噂を耳にし、その完成予定が学会日直前でしたので杮落としに使わせてもらうことにしました。また学会の会議並びに宿泊施設としての適当なホテルが市中に無く海辺のホテルにしましたが、学会場から遠く、また不渡りが出そうだという噂にビクビクしながら、学会とは関係ない所で苦労したことも今は懐かしい思い出です。この様な準備の不備に拘わらず約600名の会員にご参加頂きホット胸を下した状態でした。あまり観光する所も無い土地でしたが、学会終了後に小名浜での活きの良い魚やホテルに隣接したゴルフ場でゴルフをエンジョイした話を伺ってすこしは楽しんで頂けたかと安堵いたしました。
 学会の主題は、腱板不全断裂としました。選択の理由として、当時は腱板断裂は完全断裂だけが着目され、不全断裂に対しは欧米でも手術の対象とされていませんでしたので是非今学会では腱板不全断裂に焦点を当てたいと考えました。
 私自身の経験で、典型的な腱内水平断裂で有症状つまり夜間痛が激しく、臨床所見、検査所見(当時1980年初頭でMRI導入無く)でも異常所見が見られないにも拘わらず、患者さんの了解を得て手術に踏み切りました。しかし直視下でも腱板に摩耗・糜爛・断裂などなく、切片を採取しても変化なく困って途方にくれながらいじくりまわしていたら突然真ん中が割れてはじめてこれが腱内断裂かと気付かされました。また治療でも滑液包面断裂で表層のみが切片状に一部結節部から剥がれていたので、表層の裏面をキュレテージして深層に縫着しましたが、夜間痛が改善せず再手術を行いました。まだまだ腱板不全断裂は検討の余地があると考え当学会のメーンテーマとしました。
 不全断裂は、Codmanの不全断裂の分類(rim rents, intratendinous tear, pin hole tear, bursal tear)から進化してきています。最近では解剖学的進歩により、腱板のラミネーションが5層であることが解明され、実地臨床でもエコー、MRIで診断率も向上し、鏡視下手術の進歩とあいまって腱板不全断裂の治療は飛躍的に向上したと思います。腱板損傷の対応に微力ながら貢献出来たかと自負しております。
 尚当学会の開催にあたっては、東北大学同門や共立病院に勤務された先生方のご協力に依る処が大きかったことを申し添えます。

ホテルに隣接したゴルフ場

会場風景

会場風景2