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肩関節学会40年史

第26回日本肩関節学会学術集会の開催にあたり

会長
小川清久

 日本肩関節学会は、世界で最も古い歴史を有する肩関節専門学会として1974年に発足致しました。遠藤寿男先生のお世話された第1回肩関節研究会には、少人数ではありましたが、わが国の肩関節研究の牽引車となられた先生方が集われました。私事になりますが、私は山口で開催された第2回研究会から出席し、当時40歳前後のいかにも新進気鋭の論客らしい雰囲気を漂わせておられた山本、遠藤、信原、安達、福田らの諸先生方の熱の篭った議論を訳も分からないまま会場の隅で聞いておりました。
 その後、髙岸直人先生をはじめ現名誉会員の諸先生方のご尽力で学会としての機構が整えられ、研究内容も世界の最先端を走る状態がしばらく続きました。しかし、欧米各国が肩関節の研究に力を注ぐ様になると共に、最近我が国の研究面における地位が相対的に低落したことは否めません。この凋落傾向に歯止めを掛けるべく、本学術集会では実質を重んじ、活発な議論を通して明日への展望を開くきっかけを掴んで頂きたいと念願致しております。
 活発な議論を可能とするため本学術集会では演題数を絞らざるを得ず、幹事全員に選考委員になって頂きました。選考に漏れた演題中にも優れた演題が含まれておりましたが、充分な議論をするために例年より厳しい結果になったことをご了承下さい。また同様の目的のため、ここ数年来行われてきましたシンポジウムもいたしません。招待講演もヨーロッパ肩肘関節外科学会からのexchange fellowであるMr. Neumannによる1題のみにいたしました。いままで訪日したfellowはお二方共その該博な知識で我々を魅了されました。今回も素晴らしい内容のお話を伺えるものと期待しております。
 学会発表では、多数例に対する統計学的解析が主流を占めております。この様な発表が重要であることに異論は有りませんが、個々の症例から得られる情報が漏れてしまう危険性もあります。本学術集会では、個々の症例から得られる情報の大切さを再確認し、臨床医としての思考過程に磨きを掛ける為、症例検討を企画致しました。第1日目の夜にワインを飲みながら議論の乱闘を致したいと考えております。
この企画の為、例年開催致しておりました会員懇親会を、その後の乱闘に備える腹ごしらえをする食事会に変更致します。戦闘食ですので、粗食であることを御容赦下さい。
 最近の経済状態の悪化により、会員の皆様に充分なおもてなしができず慚愧の至りです。せめて、知的満足を土産にお持ち帰り頂ける様に無い知恵を絞りました。後は、主役である会員の皆様次第です。

1999年会長時代の小川先生