歴代会長の紹介
会長
熊谷 純
このたび第37回日本肩関節学会を主催することになりました。大変光栄に存じます。
仙台では桜井實東北大学教授(現名誉教授)が第15回(当時は研究会)を主催して以来22年ぶりの開催です。当時からみると肩の診断、治療の技術は大きく進歩しました。一方肩の病態がどれだけ解明されたかというとまだまだ仮説の部分も多く残されております。
シンポジウム【腱板断裂の長期経過観察】では10年以上の観察例を発表して頂くことにしました。過去にあまり報告されていないテーマです。腱板断裂の手術、保存的治療が加齢変化の中で、どのような位置づけにあるか考える機会にしたいと思っております。シンポジウム【肩関節拘縮:基礎から臨床】では、さまざまな手段で多様な肩関節拘縮の病態に近づき、根拠ある治療の道筋をつけられれば嬉しく存じます。主題の【肩の基礎研究】では日本の宝でもある一例一例を大事にしながら基礎研究を行うresearch-minded shoulder surgeon に大いに議論して頂きたいと存じます。もう一つの主題【肩の変形性関節症】では日本には比較的少ないとされる変形性関節症の病態や治療成績が討議の対象となります。
招待講演にはイギリスOxford大学Nuffield Orthopaedic CenterのAndrew J.Carr教授、韓国ソウル市のMadi病院のSeung-HO Kim先生のお二人をお招きしております。ヨーロッパ肩肘関節外科学会(SECEC-ESSSE)のResearch and Development CommitteeのChairmanでもあるCarr教授には腱板に関する分子生物学を含む基礎的研究を、世界で有数のshoulder arthroscopistであるKim先生には、腱板大、広範囲断裂の鏡視下手術についてお話いただく予定です。
ランチョンセミナー、モーニングセミナーでは9つのテーマを予定しました。多くの高名な先生方に講演していただきます。
日本肩関節学会は伝統的に一つの会場で会員が一堂に会して、ときに時間を忘れて議論してまいりました。しかい学会が発展し、応募演題が増加するとそれも難しくなってまいりました。本年も日本肩関節学会幹事の先生方に査読をお願いし、306演題の採用となりました。熟慮の末、午前中はシンポジウム、招待講演を全員でじっくり聴き、午後は複数の会場に分かれて議論を闘わせて頂くことにしました。ポスターセッションについては、討論では対面して言葉のやり取りをすることが少しでも真実に近づく近道であるという考え方から、短時間ながら全員に発表の場を設けました。大分厳しいスケジュールですが、どうか宜しくご協力のほどお願い申し上げます。時間的に発表を聴くことのできなかった参加者には質問紙で質疑応答が出来るように工夫しました。
本年は9月にエジンバラで第11回国際肩肘関節学会が開催されました。参加された方々には新鮮な世界の風を本学会に吹き込んでいただければ幸いです。
肩の運動機能研究会も今年で第7回になります。本年は山形県立保健医療大学理学療法学科の伊橋光二教授が会長です。階段を上るとすぐに運動機能研究会の会場ですので、医師とコメディカルとが肩関節学会と運動機能研究会とを容易に往き来しながら、広い知識を得られることを願っています。
翌日には第2回の日本肩関節学会教育研修会も開催されます。次代を担う若い先生方にはこちらにも積極的に参加され、現在のスタンダードを学んでいただきたいと思います。