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肩関節学会40年史

第40回日本肩関節学会の開催にあたって

会長
黒川正夫

 第40回日本肩関節学会を本年9月27日-28日にウェスティン都ホテル京都において開催させていただきます。
 1974年に第1回の学術集会が開催され、1997年には第24回を恩師の平澤泰介先生が京都で開催されました。第40回の節目の年に本学術集会を再び京都で開催させていただくことを誠に光栄に存じます。
 日本肩関節学会は世界最古の肩関節の専門学会であり、設立以降先輩諸先生方の着実なご努力により、また現在を支える中堅の先生、若手の新進気鋭の先生方が一体となり、発展を続けているところです。2012年からは理事・評議員制が立ち上がり、井樋栄二理事長を中心に学会の国際化、肩関節疾患の診断治療の標準化、肩関節を志す若手医師の育成などの課題に系統的に取り組まれています。
 肩関節疾患の診断、治療は、近年、大きな変貌を遂げ、ともすればわかりにくい、難しいなどと揶揄されていた分野も、科学的な裏付けがなされ、わかりやすい関節になりつつあるとともに最も面白い関節であると考えています。また、さまざまな基礎研究や疫学調査と新しい知識、方法論、技術やハードウエアーの進歩、ソヅトウエアーの発展により、より科学的根拠に裏付けされた病因、病態が明らかになり、診断法、治療法の発展につながっています。
 本学術集会が肩関節学会の40年の伝統、歴史を踏まえ、次の10年の礎となる会でありたいと思います。そのためには肩関節を専門にする医師のみならず、併催いたします第10回肩の運動機能研究会に集う肩にかかわる多職種の皆さんにも多数ご出席いただき、有意義な会にしたいと思っております。
 日本肩関節学会は過去には原則1会場で、厳しい議論が行われていました。最近は学会員の増加や肩の運動機能研究会の併設などの影響で演題数、会場が増え、厳しい議論の場が少なくなったと感じます。学術集会のあり方にも改善の余地があると考え、会場ごとにテーマを設定し、基礎研究やトピックス、若手医師の育成などの異なった目的を持ちながら構成してみました。グローバル化の中で英語でのセッションも考えましたが、同じ興味を持った者同士の方が活発な議論が期待でいるのではないかと考え、あえて別セッションはもうけませんでした。
 海外からは、米国からASES会長のJeffrey Stuart Abrams先生に肩関節鏡視下手術のTopics、ヨーロッパからオランダのJaap Willéms先生に人工肩関節について、韓国からKSES会長のSang-Hun Ko先生には腱板広範囲断裂の関節鏡視下手術についてご講演をお願いいたしました。
 教育講演は「臨床に活かす統計のために」と題してルイ・パストゥール医学研究センターの八木克己先生にお願いいたしました。
 シンポジウムとして“腱板断裂:画像診断を治療にどう生かすか”、“腱板断裂に対するリハビリテーションを科学する”を企画し、後者は肩の運動機能研究会と合同シンポジウム(Combined Session)としました。腱板断裂とリハビリテーションについて科学的根拠に裏付けられた保存療法や術後リハビリテーションのあり方について機論を深めたいと考えています。
 パネルディスカッションとして“腱板断裂:一次修復不能な場合の対処”と“肩関節周辺骨折の最小侵襲治療”を取り上げました。
 そのほかにスポンサードセミナー、モーニングセミナー、ランチョンセミナーなど肩関節に取り組む上で役に立つご講演をたくさん準備いたしましたので是非お楽しみください。
 採用させていただいた演題数は、肩関節学会では387題(外国人23題を含む)で、肩の運動機能研究会164題を合わせると551題となりました。できるだけ多くの医師、コメディカルの皆様の研究成果をご発表いただき、今後の肩をめぐる医療に役立てたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 最後に学術集会の翌日9月29日(日)午後には市民公演講座として47community(元プロ野球投手)工藤公康さんを招いて“未来ある野球少年へのメッセージ・けがなく元気に野球を続けるためにはどうすればよいのか”も予定しております。
 会員の皆さん、それを取り巻くコメディカルの皆さんには厚い議論とともに夏の終わりの京都を楽しんでいただけるよう準備いたしました。よろしくお願いいたします。