2011年日本開催以降、コロナ禍、そしてその後
日本肩関節学会
理事長 菅谷啓之
アジア肩関節学会の設立の経緯と2011年の沖縄開催の第7回学術集会までは、日本肩関節学会40年史に筒井廣明先生のご尽力で詳細に記載されており、こちらを参照して頂きたい。さて、小生はその2011年の第7回大会から事務局長として関わらせて頂いており、現在までの本学会について述べる。
アジア肩関節学会は2011年沖縄でのBoard meetingで、インドからの2名(Nicholas Antao、Sanjay Desai)が新たにboard memberとして承認された。また、会長の筒井廣明先生より、アジア肩関節学会(Asian Shoulder Association)をアジア肩肘学会(Asian Shoulder and Elbow Association)に改めるべきとの意見が出され、次回までの検討事項とされた。また、曖昧であった組織の役職定義を改めて行い下記のように定義された。
The Founding President
Katsuya Nobuhara
The Founding Board Members
Name | Country/Area |
---|---|
Peter Hales | Australia |
Gong-Yi Huang Chuanhan Feng Pu-Fan Chien |
China |
Kai-Ming Chan | Hong Kong |
Chehab R. Hilmy | Indonesia |
Ryuji Yamamoto Hiroaki Tsutsui Nobuyuki Ito Minoru Sakurai Katsuya Nobuhara |
Japan |
Young-Kyun Woo | Korea |
N. Subramanian | Malaysia |
Antonio A. Rivera Lauro M. Abrahan Jr. Andres Borromeo |
Philippines |
*Deceased founding Members represented with shaded text
Executive Board Members
Name | Country/Area |
---|---|
Peter Hales* David Sonnabend |
Australia |
Gong-Yi Huang* Qing-Yun Xue Kanglai Tang |
China |
Kai-Ming Chan* | Hong Kong |
Nicholas Antao Sanjay Desai |
India |
FA Tandjung Edi Mustamsir |
Indonesia |
Katsuya Nobuhara* Hiroaki Tsutsui* Ryuji Yamamoto Shiro Tabata Kimitaka Fukuda Minoru Yoneda Eiji Itoi Hiroyuki Sugaya |
Japan |
Kwang-Jin Rhee Yong-Girl Rhee |
Korea |
Antonio A. Rivera* Lauro M Abrahan Jr.* Alex R. Supapo |
Philippines |
Jiunn-Jer Wu* Jih-Yang Ko |
Taiwan |
Vatanachai Rojvanit* | Thailand |
*Members who concurrently serve as the Founding Member
Term of Presidency
- Current President (2011-2014): Hiroaki Tsutsui
- Past President (2008-2011): Kai-Ming Chan
- Past President (2005-2008): Gong-Yi Huang
- Past President (2002-2005): Kwang-Jin Rhee
- Past President (1999-2002): Chehab R. Himly
- Past President (1999-1996): Peter Hales
- Past President (1996-1994): Jiunn-Jer Wu
Future Host
2014 will be in Philippines and 2017 will be in India
-
図1)第7回ACASAにおけるBoard Meeting参加者
第8回ACASA
2014年11月25~26日、フィリピンのセブ島で第8回ACASAがAlberto Ma. Molanoを会長としてPhilippines Orthopaedic Associationと併催される形で開催された(図2、3)。ゲストスピーカーとして初めてアジア以外からフランスのLaurent LafosseとGilles Walchが招待され、参加国は日本、韓国、マレーシア、インド、中国、イスラエル、ブルネイ、シンガポール、インドネシア、米国、ニュージーランド、台湾、タイ、ベトナム、スリランカ、フィリピンと16の国や地域に及んだ。Founding Presidentである信原克哉先生のPresidential Lectureをはじめ、Dr. Lafosseと小生(Sugaya)によるlive surgeryもアジア肩として初めて試みられた(図4)。
第8回ACASAにおけるExecutive Board Meetingは、11月26日Cebu島のRadisson Blu Hotelにて行われた。まず、マレーシアからのboard memberとしてMalaysia Arthroscopy Society (MAS) PresidentであるDr. Hishamudin Masdarの参加が承認された。また、前回の宿題課題であったASAからASEAに関しても全会一致で承認され、今後はASEA (Asian Shoulder and Elbow Associationとすることになり、学会名もACASAからACASEAとなることが承認された。また、2017年にインドのムンバイで開催される第9回ACASEAに関してDr. Sanjay Desaiから順調に準備を進めている旨報告があった。また、2020年のHostはSingaporeとなり、Dr. Denny Lieを会長として開催することが決定した。(図5)
-
図2)第8回ACASAの学会前最終ニュースレター(左)とwebsite(右)。
-
図3)バンケットにおけるスナップショット。
左:前会長の筒井廣明先生と現会長のAlberto Ma. Molano先生。
右下:左から会長のDr. Molano、信原夫人、Molano夫人、信原先生、台湾のJih-Yan Ko先生(第11回会長予定)。
-
図4)学会後のニュースレター。
-
図5)第8回ACASAにおけるBoard Meetingメンバー
第9回ACASEA
2017年の第9回ACASEAはインドのMumbaiで開催された。今回はFounding Presidentの信原克哉先生は所用で欠席され、その代わりに欧米から多くのguest speakerが招聘された(図6)。アジアの学会であるACASEAがヨーロッパにおけるSECECのように益々開かれた国際学会として進化を遂げているような印象を与えた(図7)。
-
図6)2017年の第9回ACASEAのプログラムブック。
-
図7)第9回ACASEAの開会式
-
図8)第9回ACASEAにおけるExecutive Board Meeting参加メンバー
第9回のBoard Meetingでは、小生(菅谷)が正式にSecretary Generalに指名され、東北大学の山本宣幸先生と共にASEAのsecretary業務を行っていくことが確認された。
- 第2回のACASAでPermanent Society Presidentに指名されておられた信原克哉先生からその役職を辞したいとの申し出を受け、全会一致でHonorary Society Presidentに新たに就任して頂くこととなった。
- 今まで国・地域で人数がまちまちであったExecutive Board Members (EBM)の人数をそれぞれ原則2名に統一し、積極的に若手を登用していく方針が確認され、後日事務局に新しいEBMを報告することとなった。
- アジアの肩肘関節外科の進歩のために、従来3年おきの開催であった学術集会を2020年の次の第11回学術集会から2年おきの開催とすることとなった。
- 2020年の第10回大会はSingaporeでDr. Denny Lieを会長として行うことが確認され、2022年は第11回大会がNew Zealand、2024年の第12回大会が台湾で開催することが決定した。
- 最後に、ACASEAは本来独立開催されるべきとの意見が出たが、国・地域によっては人材的にも財政的にも独立開催が困難なところがアジアにはまだ少なくないため、独立開催というルール作りは時期尚早となった。しかしながら、学会長はなるべく独立開催に近い形となるよう努力するということで意見の一致をみた。
コロナ禍におけるASEA
2020年初頭から始まったコロナ禍により、国内外の学会の殆どが中止またはオンライン開催を余儀なくされるという状況の中で、ASEAでも大きな影響を受けた。まず2020年の第10回Singapore大会は延期に延期を重ね、2022年の12月に前回大会の5年後にやっと開催することができた。
第10回ACASEA
SingaporeではSingapore Orthopaedic Association(SOA)と併催する形で第10回ACASEAは2022年12月5日から10日にかけてシャングリラホテルで開催された(図9, 10, 11)。SOAと併催ということもあり、欧米からのゲストも多く招かれていたが、コロナ禍の混乱とアナウンスメントの遅れから、日本やアジア各国からの参加者はそれほど多くなかった。
-
図9)第10回ACASEAのパンフレット
-
図10)第10回ACASEAでのシンポジウムの様子
そのような中、Board Meetingは12月8日に開催され、下記の11名が参加した。
- Greg Hoy (AUSTRALIA)
- Roshan Wade, Sanjay Desai (INDIA)
- Andri Lubis (INDONESIA)
- Nobuyuki Yamamoto (JAPAN)
- Yong-Girl Rhee (KOREA)
- Denny Lie, VP Kumar (SINGAPORE)
- Bancha Charnchujit (THAILAND)
- Alberto Ma. Molano (PHILIPPINES)
- Hishamudin Masdar (MALAYSIA)
欠席した菅谷にかわり山本宣幸先生が司会を務めた。まず、2022年3月13日にご逝去されたHonorary Society Presidentの信原克哉先生を悼んで黙禱が捧げられた。
- 第11回ACASEAは2024年に台湾でDr. Jih-Yang Koが会長として準備を進めている。次の2026年はDr. Craig Ball会長の下ニュージーランドで開催される見通しだが、国内事情で不確定。2028年はマレーシア、2030年はタイが主催することが決定した。
- Executive Board Members (EBM)の人数について議論がなされ、Founding Board MemberとSecretaryを除いたうえで、EBMの人数はそれぞれの国・地域で最大2名までとする。また、若手のメンバーに逐次入れ替わることを推奨することが確認された。これは学会後に逐次各国・地域で進めてゆき事務局に報告するとした。
-
図11)第10回ACASEAにおけるExecutive Board Meeting参加メンバー
ASEAと日本肩関節学会との関わり
“アジア肩関節学会は信原克哉先生の私的な会合に端を発しているため、正式に日本肩関節学会から承認された組織ではない”ことが、信原先生の後継者でもある筒井廣明先生の積年の懸案事項であった。また、一方、コロナ禍もあり、学会ホームページをはじめ事務局機能が停止しており2022年の第10回大会時に、山本宣幸先生が韓国のYong-Girl Rhee先生に信原先生が他界されてしまった今、日本が中心になって責任をもってASEAを運営していくべきではないのかとの指摘を受けた。以上から、筒井廣明先生の強い要望があり、ASEAの事務局機能を改善し、日本肩関節学会主導のもとにASEAを運営していくべきではないかとの意見が出され、ASEA事務局かつ一般社団法人日本肩関節学会の理事長でもある菅谷が中心となり、理事会の承認のもと、ASEAと日本肩関節学会の関係を明文化した。
以下、2023年4月3日開催の第51回一般社団法人日本肩関節学会理事会議事録より抜粋である。『アジア肩関節学会ASA(現、アジア肩肘学会ASEA)について。菅谷啓之理事長より、2011年にアジア肩関節学会の会長を務めた筒井廣明名誉会員から、アジア肩肘学会(以下、ASEA)に対する日本肩関節学会の関わり方に関して要望があった。1994年に第1回ACASAが開催されて以来、これまで日本肩関節学会としてのASA(ASEA)との関係性の位置づけが明確でないまま今日を迎えてしまっており、事務局機能が曖昧になっている。そのため、他国のBoard MemberからASEAを日本肩関節学会が中心となり運営して欲しいとの要請があった。アジア圏内で日本が中心となり、積極的に運営していくことは意義があることとされ、理事会にて承認された。また現在、他のサーバーで更新がないまま存在しているアジア肩関節学会のホームページを停止し、新たに肩関節学会のサーバー内に別途ホームページを作成することとし、その費用も日本肩関節学会で負担することとした。また、ホームページの内容については、アジア肩関節学会で事務局を務めている菅谷啓之理事長と山本宣幸代議員で作成することとなった。また、現在はアジア肩肘学会(ASEA)と名称が変更になっているため、日本肘関節学会からも事務局要員を加え、事務局業務を肩学会事務局が手伝うこととなった。』
第15回ICSES in Rome
ICSES 2023では“Day 0 Meeting”と称して、世界の各地域に分かれたミーティングが学会前日に開催された。ASEAでもDenny Lie会長のもと、独自のプログラムを作成し、アジアからの一般演題も募ってDay 0 Meetingを行った。この際、2023年3月に鬼籍に入られたHonorary Founding Presidentである信原克哉先生を偲んで、山本宣幸先生が会の冒頭に“Katsuya Nobuhara Memorial Lecture”を行い、参加者全員で信原先生の往時に思いを馳せた。その後、肩肘をテーマにアジアからの参加者が熱い議論を交わした。
同時にExecutive Board Meeting(EBM)も行い、EBMメンバーの刷新と2026年の第12回ACASEAの開催方法に関して議論した(図12)。
-
図12)第15回ICSESにおける臨時Executive Board Meeting参加メンバー
ASEA臨時Board Meeting in Rome, Italy on Sep. 5, 2023
参加者
- Richard Page, Mark Ross (AUSTRALIA)
- Qing-Yun Xue, Guoqing Cui (CHINA)
- Patrick Yung (HONG KONG)
- Ram Chidambaram, Kr Prathapkumar (INDIA)
- Andri Lubis, Renaldi Nagarasyid (INDONESIA)
- Hiroyuki Sugaya, Nobuyuki Yamamoto (JAPAN)
- Jin-Young Park, Joo-Han Oh, Jae-Chul Yoo (KOREA)
- Hishamudin Masdar (MALAYSIA)
- Craig Ball, Marc Hirner (NEW ZEALAND)
- Denny Lie, Bryan Tan (SINGAPORE)
- Alberto Molano, Jonathan Ronquillo (PHILIPPINES)
- Jih-Yang Ko (TAIWAN) (On line)
まず2023年3月にご逝去されたインドネシアのHermawan Nagar Rasyid教授に対して全員で黙祷を捧げた。
- 2026年開催予定の第12回ACASEAに関して。ホスト国のニュージーランドから、財政的な面とオークランドの会場大規模工事のため、単独開催は無理であるとの申し出があり、オーストラリアで代理開催として頂きたいとの申し出があり、オーストラリアもこれを了承した。尚、2028年の第13回は予定通りMalaysiaで、2030年の第14回はタイで開催されることは改めて確認された。
- Prof. Jih-Yang Koがオンラインで台湾にて2024年に開催される第11回ACASEAの進捗状況について説明した。
-
Current Executive Board Members (EBM)
Australia (2): Richard S Page, Mark Ross
China (3): Qing-Yun Xue, Guoqing Cui, Chunyang Jiang
Hong Kong (2): Patrick Yung, Michael Ong
India (4): Sanjay Desai, Roshan Wade, Ram Chidambaram, Kr Prathapkumar
Indonesia (2): Andri Lubis, Iman Aminata
Japan (4): Hiroyuki Sugaya*, Nobuyuki Yamamoto*, Teruhisa Mihata, Kotaro Yamakado
Korea (3): Jin-Young Park, Joo-Han Oh, Jae-Chul Yoo
Malaysia (2): Hishamudin Masdar, Mohd Nizlan Mohd Nasir
New Zealand (2): Craig Ball, Marc Hirner
Philippines (2): Alberto Molano, Jonathan Ronquillo
Taiwan (2): Jih-Yang Ko, Wei Ren Su
Singapore (2): Denny Lie, Bryan Tan
Thailand (2): Bancha Charnchujit, Chanakarn Phormphukul
*Secretary
その後、2026年の第12回ACASEAを同年カナダで開催される第16回ICSESにおける“Day 0 Meeting”でオーストラリアとニュージーランドが共催する形で代用できないかという提案が、両国から出された。その後、Board Member間でメール審議を繰り返し、結局“Day 0 Meeting”はACASEAの代わりにはならないので、AUS/NZが2026年の“Day 0 Meeting”を主宰し、2027年に第12回としてMalaysiaで開催する方向となる模様である。
おわりに
筒井廣明先生のアジア肩関節学会40年誌をご一読頂ければおわかりいただけると思うが、アジア肩関節学会は、信原克哉先生の個人的な人脈を中心に発展し、信原先生のご尽力の元に発足した会であり、故人となられた信原先生のご功績は筆舌に尽くしがたいものがある。信原先生は、当初からFounding Society President、2017年の第9回ASEAからはHonorary Founding Presidentとなられた。しかしながら、コロナ禍もあり、2014年の第8回ACASAを最後に以後の学会には参加することなく、約10年後の2023年3月に静かに永眠された。現在ではFounding Memberも約半数の方々が鬼籍に入られ、Executive Board Memberも大幅に入れ替わった。アジアの肩肘関節外科も、1994年のアジア肩発足当時とは比べ物にならないほどレベルアップし、関節鏡視下手術や人工関節手術も広く行われるようになり、欧米を凌ぐ業績を上げている肩肘関節外科医も少なくない。今後も日本肩関節学会がリードしてExecutive Board Memberを中心に議論を繰り返し、ASEAがまさにヨーロッパのSECECや北米のASESに匹敵する組織となることを願ってやまない。