日本肩関節学会50年史

髙岸直人名誉会員

福岡大学筑紫病院整形外科
柴田陽三

日本肩関節学会名誉会員である髙岸直人先生は福岡大学医学部整形外科初代教授で、肩関節外科のみならず整形外科そのものにおける私の恩師でいらっしゃいます。先生は大正10年1月30日のお生まれで、昭和21年9月九州帝国大学医学部をご卒業なられ翌年、同整形外科に入局なされています。昭和32年7月からアメリカのデトロイト市ウエーン大学に“手の外科のレジデント”として留学なさいました。留学中、若かかりしDr Charles Neerにお会いし、これからは肩関節外科の時代がくるとの信念を持たれ先生の肩関節外科の研究が始まる事となりました。昭和47年4月より新設された福岡大学医学部整形外科の初代教授に就任されています。昭和49年(1974年)日本肩関節研究会が発足し、昭和51年(1976年)本研究会の会長をなさいました。この年から福岡大学に本研究会の事務局を置くことになり、発足当時の幹事の皆様とともに多大な苦労をなされ本学会の基礎を築かれました。

1986年10月28~30日には会長として第3回のInternational Conference on Surgery of the Shoulder(ICSS)を日本ではじめて福岡の地で開催されました(図1,2)。この学会の成功が後のヨーロッパ肩肘学会の発足に影響を与えたと言われています。第3回 ICSSの開催余剰金を基金として、翌1987年に「髙岸直人賞」が設立されました。毎年、開催される日本肩関節学会の発表論文の中で、優れた研究を行った若手研究者を顕彰するもので、これまでに30名を越える受賞者がいらっしゃいます。これらの受賞者は、その後、肩関節外科の指導的立場を果たすようになっており、名誉ある登竜門となっております。さらに2001年、第8回のICSSが南アフリカのケープタウンで開催され、「世界の肩のパイオニア」のセッションで髙岸直人先生が紹介されました。長らく闘病中でいらっしゃった先生は2010年10月10日永眠なさいましたが、日本の肩関節外科は、先生の御指導によりその後も大きく発展を続けております。先生のご冥福をお祈り申しあげますとともに、何とぞご安心いただければと存じます。

  • 第3回国際肩関節学会
    (Third International Conference on Surgery of the Shoulder) 
    1986年10月28-30日開催
    会長 髙岸直人教授による開会の挨拶
  • 第3回国際肩関節学会(Third International Conference on Surgery of the Shoulder) 会長招宴
    中央;会長の髙岸直人教授
    右端;Professor Charles Neer

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