日本肩関節学会50年史

第17回肩関節研究会

会長
加藤文雄

第17回肩関節研究会は、1990年10月12日(金)、13日(土)の2日間にわたり、加藤文雄会長(東京警察病院整形外科部長)のもと、千代田区の九段会館で開催された。演題総数は76題であった。

加藤会長は主題として『スポーツ選手の肩の障害・外傷の治療』を取り上げられた。この主題は2つのセッションに分けられ、それぞれ田畑四郎先生、水野耕作先生が座長を勤められた。発表は計17題で、スポーツ選手の肩に発生する各種病態、少年野球の肩障害、関節鏡視下手術、反復性脱臼に対する手術成績、肩鎖関節脱臼に対する手術成績などが報告された。加藤先生はそれまでの肩関節研究会で、習慣性脱臼、随意性脱臼、再発性脱臼などの不安定症に関連する用語の混乱を整理しようという意欲をお示しになって来られたが、この研究会でも、外傷を契機に始まった再発性脱臼を「反復性脱臼」と呼ぶことが浸透していた。

招待講演はロンドンGuy’s HospitalのMichael Watson先生による”Shoulder instability in athletes”であった。Watson先生は加藤会長同様、体躯も物腰もスマートな方だった。この招待講演は主題の2つのセッションに挟まれた時間帯に配置され、参加者は主題の前半を聞いた後、まさに主題であるWatson先生の講演に耳を傾け、そして主題の後半へと続く流れになっていた。加藤会長らしいスマートなプログラムであった。

加藤文雄先生が会長をされると聞いたとき、私は準備のお手伝いを申し出た。しかし加藤先生は静かに「大丈夫だよ」とおっしゃったので、あえてそれ以上の申し出はしなかった。東京警察病院のスタッフの方々のご協力によって研究会を準備し、運営されたのだと思うが、後に自分が会長となって初めて準備の大変さを体感することになり、今思うと少々でしゃばってでもお手伝いをして差し上げるべきだった。それにもかかわらず研究会では、若輩者である私を腱板損傷のセッションの座長にご指名くださった。加藤先生の思いやりだった。

余談であるが、この翌年の1991年から『肩関節研究会』は『日本肩関節学会』となったため、加藤先生が会長をされた第17回が最後の『肩関節研究会』となった。また会場となった九段会館は、1934年落成の帝冠様式のクラシックな建物であったが、老朽化のため取り壊しが決まっている。

謝辞:第17回肩関節研究会の写真をご提供いただいた東京警察病院副院長 冬賀秀一先生に感謝申し上げます。

(文責 玉井和哉)

  • 会場入口
  • 招待講演Watson先生と加藤会長
  • 会長挨拶
  • Watson先生に感謝状を贈呈する加藤会長
  • 座長
  • 東京警察病院のスタッフの方々とともに
  • 総会での表彰
  • 懇親会でのバンド演奏

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