会長
福田公孝
第29回 日本肩関節学会
開催日時: 2002年9月20日(金)-21日(土)
会場: 札幌プリンスホテル・国際館パミール
第29回日本肩関節学会は、第12回日本肩関節研究会を1985年に松野誠夫先生が札幌で主催されて以来、17年ぶり2回目の札幌での開催でした。2002年時点では会員数約1200名、参加者が約900名の規模でしたが、地方の病院(市立三笠総合病院)に勤務している一医師として、肩学会を開催することは名誉なことでありましたが、運営などについて大いに悩みました。
主題は当時問題となっていた「肩関節のスポーツ外傷・障害」と決定し、「投球障害」「肩鎖関節脱臼・亜脱臼」「肩関節脱臼・亜脱臼」の3つに焦点を絞りましたところ、活発で白熱した討論が行われ、現在も継続する様々な研究の原点にもなったと思います。さらにこれらの149演題の発表とともに招待講演をお願いしました。
Hospital for Special Surgery(New York)のEdword V. Craig先生には、「肩鎖関節脱臼の諸問題」について主に臨床面から鎖骨遠位端骨折分類などを含めて詳しく講演頂きました。
Mayo ClinicのKai-Nan An先生には、「スポーツに関連する肩と肩鎖関節のバイオメカニクス」を基礎から丹念に分かりやすくお教えいただきました。以上2つの招待講演は会員から非常に有益であったとの評価をいただきました。
この日本肩関節学会に先立ち9月18日(水)には三笠市において三笠元彦先生に無理をお願いして、市民講座「五十肩について」を開くことが出来ました。日本肩関節学会の地域住民に対する貢献の一部となったと確信しております。三笠先生、有難うございました。
1974年の卒業直後より北大で整形外科一般、肩の外傷、脱臼を松野教授より厳しく叩き込まれ、手と肩の外科、基礎研究を石井清一先生に学び、肩のバイオメカニクスをMayo ClinicでChao先生、An先生そして、臨床をCofield先生に指導され、当時Minnesota大学助教授であったCraig先生とともに肩鎖関節のバイオメカニクスの研究を共同で行い、1986年にこれを完成し発表(文献:1)できたことが私の肩に対する情熱のもとであり、その背景があったからこそ会長の重責を担うことになったことは言うまでもありません。この時の教訓が肩学会会員相互の研鑽を行うために教育研修会を創設すること、学術集会だけが研究の発表の場ではなく全国規模の研究の共同化などを学会の目的とするなどという、さらにグローバル化してきた現在の(一般社団法人)日本肩関節学会の原動力の一助になったかもしれません。
一方で、そのような状況下で、人と人との相互の信頼が重要であることを教えられました。当時の三笠市の青木市長、市議会、市立三笠総合病院そして職員のご協力が得られ、北大整形外科の三浪明男教授、北大整形外科同門会の先輩、同輩、後輩の先生がたが一致団結していただいて、この第29回日本肩関節学会の開催を支援していただいたこと、さらに、特に現在の一般社団法人 日本肩関節学会理事としてご活躍の末永直樹先生が事務的なことを一切取り仕切り、その下で大泉尚美先生、船越忠直先生他大勢の先生方に献身的に働いてもらい、それらの結集した力が、学会を成功裏に終了させることが出来た源になった点です。深く心からの感謝を申し上げます。この日本肩関節学会の札幌開催をきっかけに北海道肩研究会が創設され、すでに28回を数えることになり、北海道の各地に肩に興味を持つ先生方が増えてまいりました。嬉しいことです。
日本肩関節学会に少しでも貢献できたと思うことは、もう一つあります。それは日本肩関節学会のロゴを作成し、それが幸いにも公式に採用され現在も使用されていることです。下の図は私の手書きのオリジナルですが、1985年松野誠夫教授の主催した第12回日本肩関節研究会の抄録、ポスターなどに使用させていただきました。その後、日本肩関節学会が学会のロゴを公募した際に、このロゴを応募したところ学会で正式に認められて、日本肩関節学会の公式ロゴ(意匠登録済み)として採用されたことは、柴田陽三先生の本学会の歴史にも記述があるところです。
今後も 一般社団法人 日本肩関節学会の成長と発展、会員相互の懇親がさらに深まることを楽しみにしております。そして家庭を顧ず、自儘を許してくれた家族に心から感謝します。
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図1)
講演前日:左から大泉尚美先生、余裕のCraig先生(しかし、この後講演直前までパソコンと格闘していました)
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図2)
講演後:サッポロビール園でリラックスしたAn先生ご夫妻
(ビールジョッキの取っ手のバイオメカニクスの講義?を受けているところ・・・An先生の奥様のご冥福をお祈りします)
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図3)
手書きのオリジナルのロゴ(1985年) -
図4)
第12回日本肩関節研究会抄録(昭和60年、1985年10月5日-6日、札幌パークホテル) 北大整形外科 教授 松野誠夫会長
文献:
1)J Bone Joint Surg Am. 1986 Mar;68(3):434-40.
Biomechanical study of the ligamentous system of the acromioclavicular joint.
Fukuda K, Craig EV, An KN, Cofield RH, Chao EY.