日本肩関節学会50年史

第49回日本肩関節学会追想録

会長
東京医科大学 運動機能再建外科学寄附講座 高瀬勝己

第49回日本肩関節学会を会長 高瀬勝己、第19回日本肩の運動機能研究会を会長 後藤英之のもと令和4年10月7日、8日の2日間に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜ノースにて現地参加として開催致しました。過去2回(第47回・48回)の学会ではCOVID-19の影響により様々な制限があり、3年ぶりの現地参加の学会となりました。しかし、COVID-19感染流行が完全に収束していなかったため本会の一部(会長講演、信原克哉メモリアル、招待講演、国際シンポジウム、KSES lecture、主題)を学会終了後の10月25日から11月15日までの期間でオンデマンドにて配信し、現地参加が困難な先生方に情報の提供を行わせて頂きました。最終的には学会参加者は、海外からの招待者7名、KSES参加者26名の国外参加者33名を含めた総計1300名以上で、混乱なく通常学会と同程度の規模で行えたと考えております。学会開催2か月前にはCOVID-19の感染状況が悪化し通常開催が危ぶまれましたが、学会前日の会長招宴、学会初日の全員懇親会を無事に開催することができました。また、海外招待者も当初の予定していた先生方に参加して頂くことができ有意義な討論ができたのではないかと自負しております。

本会のテーマは「飛耳長目 -知見から創造へ-」と致しました。飛耳長目とは、「飛耳」は遠くのことを聞くことができる耳、「長目」は遠くまでよく見通す目を持ち合わせるという意味から、すぐれた情報収集能力があり深い観察力と鋭い判断力を備えることのたとえです。この観点で得られた様々な知見から新たな創造を生み、肩関節外科の新たな展開を導くことを念頭に様々なセッションを考えさせて頂きました。特に今回は、国際シンポジウムを2演題:肩鎖関節脱臼の病態と治療(二村昭元先生, Prof. Debski, Prof. Beitzel, Prof Scheibel, 森川大智先生)・上腕骨近位端骨折に対するAnatomical Hemi -・Total - SAあるいはReverse SAの選択(Prof. Burkhead, Prof Castagna, Prof Yong Girl Rhee, 池上博泰先生、山門浩太郎先生)を設け、両演題共に座長は海外招待者、国内の各1名、講演者は海外招待者3名、国内2名とさせて頂き、国内外の立場から活発な討論をしていただきました。セッションは1時間30分と短い時間ではありましたが、過去2年強の期間に接触することが困難であった国外の考え方を肌で触れることができたのではないかと思っております。また、KSESとの交流では、前および現会長(Prof Yang-Soo Kim, Prof Sang-Jin Shin)の講演、KSES traveling fellow講演2演題、KSESからの39演題があり、彼らの肩関節に関する積極的な姿勢を実感させて頂きました。この姿勢は、日本肩関節学会も見習うべき点ではないかと痛感いたしました。パネルディスカッション1演題(腱板一次修復不能例に対するRSA以外の術式選択と限界)・主題6演題(肩関節手術における新たな試み、鏡視下Bankart術後の関節窩横径の経時的変化 -影響を与える因子とは-、基礎研究から検討した術後腱板修復に影響を与える因子、高度骨粗鬆症を伴った上腕骨近位端骨折における治療戦略、Anatomical TSAとRSAの治療成績向上を目指した工夫、腱板断裂縫合術の腱骨癒合における工夫と結果)とし、各演題に座長を2名でお願いし有意義な討論がなされたものと拝察いたしております。一方、運動機能研究会ではシンポジウム1題、combined session 1題、主題5題と肩学会同様に活発な討論をしていただきましたが、例年と比較して発表者および参加者共に低調であったことが残念ではありました。両会共にCOVID-19感染の状況を配慮してポスターセッションを廃止し全員がスライド発表するショートトークと致しましたが、演題数の都合にて1時間に最大で11演題になってしまったことに関して座長ならび演者の先生方にはお詫び申し上げます。

特別講演として信原克哉メモリアルを畑幸彦先生にご講演して頂きました。学会創設期から現在に至るまでの信原先生のご活躍や在りし日のお姿を拝見し感涙にむせぶ思いでした。貴重な資料を提供して頂いたご家族の皆様、講演をしていただいた畑先生には感謝申し上げます。

本学会では私の恩師であるBurkhead先生に来日して頂いたのみではなく、2023年開催のICSES会長のCastagna先生、KSES会長のSang-Jin Shin先生、Zoom参加ではありましたが2024開催のGerman Orthopedic and Trauma Society会長のScheibel先生に参加して頂くことができました。これらの著明な先生方が私の主催する第49回学会に来日していただけたことを誇りに思っております。これらの先生方の講演やセッションでのディスカッションを聞き、学会に参加して頂いた先生方におかれましては国際学会への発表あるいは英語論文の作成の一助になったのではないかと思います。

最後となりますが、このような会を主催させて頂けたことにあらためて皆様方に御礼申し上げます。

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