名誉物故会員名誉物故会員

肩関節学会40年史

土屋弘吉先生を偲んで

森岡 健

 日本肩関節学会の40周年にあたり、恩師故土屋弘吉先生を偲ぶ機会を与えられ誠に光栄に存じます。
 1977年、先生は第4回日本肩関節研究会会長に際して、会則の制定、幹事の選出、機関誌の発行等を決定されました。同年5月30日には、機関雑誌「肩関節」を創刊され研究会の充実・発展に尽力されました。
 また、先生は1964年本邦において新しい手術法としてBristow変法(当時はBristow-McMurray法と呼称)をはじめて採用しました。しかし当時はMeadの記載する術式をそのまま行っていましたが、その後いくつかの改良(①鳥口突起の骨切りの工夫、②移植骨片の母床の作製、③肩甲下筋スプレッダーの使用、④使用する螺子の改良)が施されました。その結果、安定した良好な術後成績が得られ今日では本邦において広く利用されるようになりました。当時は現在のようにECHO,CT,MRIなどの検査法がありませんでしたので、先生は肩関節造影検査をルーチンの検査法として採用されました。反復性肩関節脱臼の原因、肩腱板断裂の診断、更に五十肩の病態の把握などに関節造影検査はたいへん有用でした。
 こうして筆を執っておりますと先生の思い出が走馬燈のように甦ってまいります。
 残念ながら、先生は1992年8月3日黄泉の国へ旅立たれましたが、ここに先生のご冥福を心からお祈りいたします。

<土屋弘吉>
物故年月日:1992年8月3日
生年:1915年
幹事就任年:1977年
名誉会員就任年:1989年

土屋弘吉先生を偲んで