検討用語
(いわゆる)五十肩
これまでの経緯と検討の実施理由
「(いわゆる)五十肩」という用語の位置づけについては、本学会においてもこれまで繰り返し検討が行われている。2016年には学術委員会により全会員を対象とした意識調査が行われ、2021年の雑誌「肩関節」に結果が報告されている(文献1)。その中には、「五十肩は俗語であり学術用語ではなく、凍結肩がもっとも適正な用語と考えられる」と明記されており、「今後日本肩関節学会や日本肩の運動研究会での発表、雑誌肩関節への投稿論文ではISAKOSの提言(文献2)に基づいた用語を使用する」と述べられている。ただし、「健康保険・社会保険の診断名や患者さんへの説明の際に肩関節周囲炎や五十肩を用いてもまったく問題ない」との一文も追記されている。
2022年には、日本整形外科学会から本学会に対して、整形外科用語集から「五十肩」を削除すべきか否か検討要請があったことから、当委員会内で検討が行われた。その際には、全委員が「『五十肩』が学術用語として不適当である」という認識を共有していたものの、この用語が実際に肩関節の臨床現場や学会発表、論文等において多数使用されている現状に鑑みて、「用語集からの削除にまで踏み込むのは時期尚早である」、という結論になった。
しかし、その後も同様の意見が繰り返し提出され、2023年に本委員会が実施した日本肩関節学会会員に対する検討希望用語募集においても、「(いわゆる)五十肩」という用語について、使用禁止にすることを求める意見が複数出された。こうした意見を踏まえて、当委員会としても本学会会員のこの用語に対する認識について、再度調査を行うこととした。
調査・検討方法
アンケート
2024年2月から3月にかけて、本学会代議員および名誉会員・功労会員110名を対象として、「五十肩」、「いわゆる五十肩」の学術用語としての使用や患者説明における使用の可否、用語集からの削除の可否について、アンケート調査を実施した。
結果
添付資料の通り、「五十肩」、「いわゆる五十肩」という用語を、医学用語として投稿論文や学会発表において、使用禁止にすべきと回答した会員が64名と過半数を占めてはいたが、その一方で「いわゆる五十肩については使用してもよい」と回答した会員が32名、さらに「両者とも使用してよい」と回答した会員も10名いた。その他の質問についても一致した見解は得られておらず、様々な意見があることが改めて確認された。
結論
今回の調査を通して、「(いわゆる)五十肩」は学術用語としては不適切であるものの、依然としてこの用語に対する認識は一致をみていないことが確認された。そのため、少なくとも現時点においてこの用語の「使用禁止」や「用語集からの削除」にまで踏み込むことは適当でないと考えられた。
以上を踏まえて、日本肩関節学会用語委員会としては、2021年に学術委員会が示した「今後日本肩関節学会や日本肩の運動研究会での発表、雑誌肩関節への投稿論文ではISAKOSの提言に基づいた用語を使用する。ただし、健康保険・社会保険の診断名や患者さんへの説明の際に肩関節周囲炎や五十肩を用いてもまったく問題ない」という見解を維持するべきと結論した。
文献
- 浜田純一郎,高瀬勝巳,藤井康成,乾浩明,小林勉,後藤昌史,塩崎浩之, 畑幸彦,田中栄,林田賢治,森澤豊,森原徹,山本宣幸.拘縮肩と凍結肩の定義と適正な学術用語.肩関節45巻1号: 122-126, 2021.
- Itoi E, Arce G, Bain GI, Diercks RL, Guttmann D, Imhoff AB, Mazzocca AD, Sugaya H, Yoo Y-S. Shoulder Stiffness: Current Concepts and Concerns. Arthroscopy 32(7): 1402-1414, 2016.