この度、第2回国際論文奨励賞を頂きました。私のようなロートルがこのような賞を頂いてよいのか?これからこの賞を励みにして論文を書いていかれる若い先生方から、貴重な賞金を奪ってしまったことをお詫びしつつ、今回受賞に至った経緯を述べたいと思います。
私は高岸直人賞決定委員会に所属している関係で、この賞の創設を知りました。第47回日本肩関節学会学術集会会長を務められた北新病院の末永直樹先生が、日本から世界へ 情報発信すべく、本学会の公式英文機関紙であるJournal of shoulder and elbow surgery誌等への投稿 を奨励するために本学会に寄付された基金を元に、この賞は設立されました。肩関節やその他の整形外科分野だけでなく、あらゆる分野で日本人の国際論文数が減少していると言われていますが、日本人によるJSESへの投稿も年々減少していることを危惧されての寄付であったとお聞きしています。このお話を聞いた時は、果たして1年に3編JSES関連に採用される人なんているのだろうかというのが正直な感想で(思い浮かぶのは1人くらい)、自分が応募することなど夢にも考えていませんでした。
私が、今回英語論文を書きだした理由は2つで、コロナ禍で暇であったことと、60歳を過ぎたら(2022年5月3日でした)論文を書くのをやめようと思ったことでした。その当時、自分の頭の中にあって、まだ書いていなかったテーマは7つでしたが、どれもあまり有望とは言えない内容でしたので、2-3論文アクセプトしてもらえればラッキーかなと思っていました。私が英語の論文を書きだした若い頃は、肩学会で発表し、肩関節に投稿、査読の先生方の評判の良かったものを英語で書いてみるというスタイルでしたが、2重投稿云々がうるさく言われ出した頃からは、学会に発表する前に英語論文を書くスタイルに変わっていきました。何個も論文を書くと、同時に査読結果が返ってきたりすることもあり大変なので、基本的にひとつの論文がアクセプトされたら、次の論文を書きだすようにしていました。しかしながら、最近は後輩の論文の面倒をみながら、自分の論文を書いても、さほど混乱することが無くなってきていましたので、ひとつ書き終わって投稿したら、次の論文を書きだすことにしました。その結果、1論文を除いて60歳の誕生日までに投稿し終わり、60歳のうちにすべての論文がアクセプトされ、何とか当初の目標通り論文執筆活動を終えることができました(JSES;2, JSES international;3, JOS;2)。英語を話したり、書いたりするのが決して得意ではない私が、英語論文をたくさん採用してもらえるようになったのは、若い頃から米田稔先生にたくさんの論文の査読に関わらして頂き、さらに査読委員、編集委員も経験させて頂いたため、査読者が何を聞いてくるのか予想ができ、あらかじめそのあたりをすきなく記載することができるようになったからだと思っています。すなわち、私は肩関節学会に育てて頂き、今回の受賞に至ったのだと確信しています。
これまで私はスポーツ整形外科を名乗ってきた関係で、論文はまず、AJSMかArthroscopyに投稿し、だめならJSESに投稿するという、JSES関係者には大変失礼なことをやってきました。今回の7論文を書く以前は、first author22論文のうち、JSESは1論文のみでした。今回も、似たような感じで投稿していましたが、幸い早いうちにJSESに2論文アクセプトされた関係で、JSESに投稿して、だめでもJSES internationalという判断もできました(賞金をあてにして)。今まで、全然JSES に貢献してこれませんでしたので、受賞後廊下ですれ違った末永先生に握手して頂いた時には、一安心しました。
若い先生方に一言、JSESはめちゃくちゃハードルが高いですが、JSES internationalのハードルはかなり低いです。ただし、JSESにはほぼ毎回native checkを受けるように言われますし、JSES internationalの投稿料も非常に高く、出版に至るにはたくさんのお金が必要となります。私には研究費はありませんし、論文執筆に対する病院からの援助もありませんので、今回の賞金は非常に有難かったです。末永先生も言っておられますが、賞金がすぐになくなるくらい、頑張ってJSESに投稿してください。苦労して書いた英語論文は、いつまでも残り、世界中の人に読んでもらえます。
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第2回国際論文奨励賞を受賞して
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