この度はこのような賞を頂き、誠にありがとうございました。思い起こせば、2014年に肩学会に入会し、これまで研鑽を積んで参りました。日本人の先生方が書かれた英語論文を目にする度に、いつかは自分も、と思いを馳せて参りました。2019年から独学で英語論文を書きはじめ、滑って転んでなんとかアクセプトまで辿りついた事は、自分にとって大きな自信になりました。一昨年、昨年と本賞を頂きましたが、当然ながら執筆した論文すべてがJSESにアクセプトされた訳ではありません。むしろリジェクトされた本数の方が余程多いです。ではどうすればアクセプトの回数(必ずしも率ではありません)を上げることができるのか、自分なり考えていること、心がけていることを、後輩達に向け、二つ書きたいと思います。一つは「習慣にすること」です。研究を行うにはデータが必要です。臨床研究を行う場合、日頃からclinical questionを持つ必要があると思います。そういった視座にたてば、日常診療の中でデータを採取する習慣が身に付きます。そして執筆そのものを習慣化することです。これは二つ目にも繋がるのですが、毎日少しずつでもいいから書く、研究を進めることが重要だと思います。人間は弱いものです。意志の力でもってすべての物事を成し遂げられる人もいるとは思いますが、多くの場合、「今日はやる気がおきない」、「飲み会があるから」といってやらない理由を簡単に見つけてしまいます。
二つ目は、とにかく「打席にたつこと」だと思います。まずは投稿しなくてはアクセプトはありえません。JSESのアクセプト率は約2割です。こう聞くと高い壁ですが、当たり確率2割で10回宝くじを引いて、少なくとも1度は当たりを引く確率はいかほどでしょうか?単純な余事象の計算になりますが、1.0引く0.107で約89%となります。つまり10回投稿すれば、1回ぐらいアクセプトされる確率は約90%です。こう考えるとなんとなく通りそうな気がしてきます。実際には、書いているうちに(ポジティブ)フィードバックループがかかり内容は洗練され、アクセプトの確度はさらに高まっていくと思います。しかし一発必中でアクセプトは難しいと思います。筋トレするとき、筋肉だけで体重を増やすことができるでしょうか。自ずとぜい肉(無駄)もついてきます。まずは圧倒的な量をこなすことが、論文のみならず手術手技の向上を図るうえでも重要だと思います。リジェクトされたからといって人間性を否定されるわけも、先が閉ざされるわけでもありません。せいぜいプライドが少し傷つく程度です。まずは思い切って書いて、投稿することが大切だと思います。
私自身、書く面白さ、世に問う意義深さが少しわかってきました。これからも精進致します。この度は有難うございました。