日本肩関節学会の取り組み

学術論文

第36回(第49回日本肩関節学会)髙岸直人賞受賞 基礎論文

上原 弘久

順天堂大学附属浦安病院

The Effect of Vitamin C and N-Acetylcysteine on Tendon-to-Bone Healing in a Rodent Model of Rotator Cuff Repair
Uehara H, Itoigawa Y, Wada T, Morikawa D, Koga A, Nojiri H, Kawasaki T, Maruyama Y, Ishijima M.
The American Journal of Sports Medicine. 2023 May;51(6):1596-1607.

この度は栄えある髙岸直人賞基礎論文部門を受賞し誠に光栄に存じます。本賞選考委員の先生方ならびに選考にご尽力を頂きました理事・代議員の先生方に心より御礼申し上げます。

腱板修復術において修復部における腱骨間の癒合は重要である。酸化ストレスは修復部の癒合を阻害すると報告されているが、その対処法は確立されていない。本研究の目的は、ラット腱板修復モデルを用い抗酸化剤であるN-アセチルシステイン(NAC)やVitamin C(VC)による酸化ストレスの軽減が腱板修復部に与える影響を調べることである。
SDラットを用い、棘下筋腱を断裂させ1週後に修復する腱板修復モデルを作製した。3群に分け、NAC(NAC群),VC(VC群),又は蒸留水(Control群)を飲水させた。修復後3,6,12週後に腱板と上腕骨頭を採取し、組織学的評価とDihydroethidium(DHE)輝度とカルボニル化蛋白より酸化ストレスの評価を行った。また抗酸化酵素Superoxide Dismutase(SOD)1,2,3,peroxiredoxin(PRDX)5,また腱骨癒合の関連酵素としてCOL1,3, MMP1,3,13のmRNA発現を測定した。さらに引張試験機にて腱骨付着部の引張強度を測定した。統計は2元配置分散分析を用い3群間で比較を行った。
組織学的評価では、Control群と比較しchondrocytesは修復6週後のNAC群(p<0.05),VC群(p<0.01)で、fibrocartilageは6週後のVC群(p<0.05)で、collagen fiberは6週後のNAC,VC群で増加し(p<0.05)、NAC,VC群で癒合促進傾向を認めた。DHE輝度は3,6週後のNAC群(p<0.05),VC群(p<0.01)で低下しカルボニル化蛋白は6週後のNAC,VC群で減少した(p<0.05)。mRNA発現に関しては、3週後のVC群でSOD1, 6週後のNAC群でPRDX5が上昇した(p<0.05)。COL3は6週後のVC群で上昇し(p<0.05)、MMP13は6週後のNAC,VC群で低下した(p<0.05)。引張強度に関して3群間に有意差は認めなかった。
NAC,VC共に腱板修復部における酸化ストレスを軽減し腱骨間の癒合を促進した。さらにVCは酸化ストレスの強い低減とCOL3の上昇により、より強い癒合傾向を認めたと考えられた。
最後になりましたが、本研究の御指導頂いた糸魚川善昭先生、ならびに御助言を賜りました森川大智先生にこの場をお借りして御礼申し上げます。

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