日本肩関節学会の取り組み

海外だより

海外留学だより

井上 淳平

名古屋市立大学

1. 自己紹介

ピッツバーグ大学に留学中の井上淳平と申します。名古屋市立大学を2011年に卒業後、2013年に同大学整形外科に入局し、2020年には大学院に進学して肩肘グループに所属しています。しかし、大学院を休学し、2022年9月から2025年3月までの期間、ピッツバーグ大学にて留学することとなりました。

2. 留学に至った経緯

名古屋市立大学から後藤英之先生がピッツバーグ大学に留学されたことをきっかけに、以降継続的に同大学への留学者が生まれ、私は11代目となります。私の指導教官である吉田雅人先生、武長徹也先生が、肩関節のバイオメカニクス研究で著名なRichard E. Debski教授の「Orthopaedic Robotics Laboratory」に留学されて以来、名古屋市立大学の肩肘グループのメンバーは、この研究室で肩関節に関する研究を行っています。英語での学会発表を行う先輩方の姿を見て、私もその背中を追いたいという思いが強くなり、留学を決意しました。

3. 留学生活での不安とその現在の感想

留学が決まった後、円安やインフレの影響で金銭的な不安を感じる日々が続きました。ピッツバーグ大学から給与をいただいているものの、健康保険や家賃でほぼ消えてしまい、さらに名古屋で自宅を購入したばかりだったため、ローンの支払いも続けなければならず、毎日為替相場を気にしながら預金が尽きないかと不安に思っていました。しかし、毎週末は休みで様々な場所に出かけ、スポーツ観戦や旅行を楽しむことができました。生活が安定してくると、意外にも日本では考えられないような割引が頻繁にあり、妻が賢く買い物をしてくれたおかげで、生活費を抑え、旅行費用を確保できました。ピッツバーグには、アメリカの4大スポーツ(アイスホッケー、アメリカンフットボール、野球)があり、特にMLBのパイレーツのスタジアムでは大谷選手を始めとして日本人選手を見ることもでき、家族で非常に楽しいひとときを過ごしています。

写真1. クリスマスパーティー
写真2. Dr.Debski夫婦とアメフト観戦

4. 家族への留学の話とその反応

留学当初、子供は8歳、6歳、3歳でした。長女はアメリカでの生活を非常に楽しみにしており、長男と次男は特に心配していなかったようです。ちょうどコロナ禍の時期だったため、外出が制限されていたものの、妻も新しい生活に期待を抱いていました。子供たちは現地の公立学校に通っており、初日は大音量で音楽を流しながら踊る先生に迎えられ、すぐに学校生活に馴染むことができました。アメリカの学校では「楽しく通学すること」が重視されており、子供たちは毎日楽しそうに登校しています。習い事も非常に充実しており、サッカー、野球、テニス、アイススケート、スキーなど、季節ごとに多様なスポーツを体験しています。ピッツバーグの夏は自然が美しく、鹿やリス、ウサギなどを頻繁に目にすることができ、長い日照時間を活かして仕事後の時間も楽しんでいます。冬には極寒の気温(マイナス20度)に見舞われることもありますが、乾燥した雪の中での生活は貴重な経験となりました。また、ピッツバーグからはニューヨーク、ワシントン、クリーブランド、コロンバス、ナイアガラなどへ車で簡単に旅行でき、長期休暇を利用してマイアミ、カンクン、ロッキーマウンテン、イエローストーン、グランドキャニオンなどにも訪れ、大自然を満喫することができました。

5. 海外留学を考えている方へのアドバイス

海外での生活は、家族にとっても非常に貴重な経験でした。同時期には神戸大学の山本先生、抽冬先生、鎌田先生、金沢大学の下崎先生、日本大学の矢作先生、昭和大学の上條先生など、同世代の整形外科医と共に切磋琢磨し、家族ぐるみで仲良くさせていただいており、感謝の気持ちでいっぱいです。また、ブラジルやドイツ、ギリシャ、トルコなど、世界各国から集まったフェローたちと研究を共にできたことは、非常に有意義でした。日本で自宅購入を考えている方には、留学後に決断することをお勧めします。

6. ピッツバーグ大学での研究活動

私が所属する「Orthopaedic Robotics Laboratory」では、関節力学試験ロボットを駆使して、肩関節脱臼による関節包の伸長をMRIで検出する研究や、投球障害による前方不安定性に関するバイオメカニクス研究が行われています。クリニックでは、ACL再建後に採取された大腿四頭筋腱の術後形態変化や、腱板断裂の保存治療における断裂サイズの変化を超音波で調査しています。また、難治例の膝手術や肩関節手術を多数執刀されているMusahl先生の手術見学を行い、月曜の7時30分からの腱板断裂に関するミーティング、火曜の7時からのACLミーティング、水曜の6時からのスポーツカンファレンスなど、朝早くからのミーティングに参加しています。木曜の5時30分からのMusahl先生主催のワークアウトにも時折参加させていただいています。

写真3. Musahl先生, fellowとworkout
写真4. Musahl先生、fellowと外来にて

最後に

この貴重な留学経験を支援していただいた村上英樹教授、吉田雅人先生、武長徹也先生をはじめ、同門の先生方に心より感謝申し上げます。

写真5. ピッツバーグの黄色い橋

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