日本肩関節学会の取り組み

海外だより

韓国トラベリングフェロー帰朝報告

吉田 勇樹

公立福生病院 整形外科

このたび、2025年3月3日から3月30日までの4週間、JSS/KSES Traveling Fellowとして平川義弘先生とともに韓国18施設を訪問し、KSES Annual Meetingで発表する貴重な機会を頂きました。私は前半2週間についてご報告いたします。

Day 1, Welcome party(Seoul)

仁川空港到着後、ソウル市内のホテルに移動し、夜にはKSES国際委員の先生方に歓迎会を開いて頂きました。韓国料理とソジュ(チャミスル)で温かくおもてなし頂き、会食文化についても教えて頂きました。また、今回のTravelling Fellowの行程について、トルコ(3週間)およびタイ(2週間)のFellowと手術日程が重ならないよう、綿密な調整を重ねていただいたことを伺い、心より感謝の気持ちを抱きました。そして、前半はソウルを拠点とし、各施設を日帰りで訪問するスケジュールとなりました。

Day 2, Dr. Jung-Han Kim(Busan Paik Hospital, Inje University)

早朝4時30分に出発して釜山へ向かい、3件の人工肩関節手術を見学しました。後方展開に関してラミナスプラッターを関節窩と骨頭骨切面にかけることで関節唇の切除や関節包の剥離が容易になる工夫や、肩甲下筋修復にアンカーを用いたSuture Bridgeを行っていた点が大変印象的でした。Jung-Han先生はとてもお酒が強く、私も宴会序盤から飲み過ぎてしまい帰りの高速列車は寝落ちしてしまい気づいたらソウルでした。

上:Day 1、下:Day 2

Day 3, Dr. Hyun-Seok Song(Eunpyeong St. Mary’s Hospital, Catholic University)

Dermal allograft を用いた鏡視下腱板修復を含む3件の手術を見学しました。2026年KSES PresidentであるSong先生は物腰柔らかで、手術の要点を丁寧に教えて下さりました。同施設のHyung-suk Kim先生も「とても優しい先生」と仰っており、3日目の段階ですでに我々の体調を気遣い、会食時間を調整してくださるなど温かさが印象的でした。10月にJSSのInvite speakerとして来日された際も、私に気さくに声を掛けてくださり、とても嬉しかったです。

Day 4, Dr. Tae-Kang Lim(Nowon Eulji Medical Center, Eulji University)

朝に発表の機会をいただいた後、アキレス腱allograftを用いたLower Trapezius Transferを含む3件の手術を見学しました。この一連の訪問を通して、私が最も強く感じた韓国と日本の違いは、allograftの使用が可能かどうかという点であり、韓国ではallograftにより治療の選択肢が大きく広がり、日本では施行できない術式が数多く行われていることに深い刺激を受けました。Tae-Kang先生はとても気さくで話やすい方で、手術中においても重要なポイントは一度手を止めて説明して下さりました。一方で、会食では注がれたソジュのグラスの手を止めることなく飲み干されており、同施設の先生方とともに飲み語らう楽しい時間となりました。

上:Day 3、下:Day 4

Day 5, Dr. Joo-Han Oh(Seoul National University Bundang Hospital)

朝のMini symposiumで発表の機会を頂いた後、表彰状と記念のお土産をいただきました。続いて見学した4件の手術では、多くのスタッフが緊張感を持ってそれぞれの役割をこなしているのが印象的でした。Oh先生の明確な説明に加え、質問には必ずご自身の論文とデータに基づいたエビデンスで回答してくださり、さらに手術の合間にはレクチャーまで行ってくださるという極めて教育的な時間を過ごしました。韓国だけでなく中国・インドからのFellowも在籍し、それぞれに研究テーマが与えられており、国際的な教育拠点であることを強く実感しました。会食では持参してくださった高級な赤ワインをご馳走になり、初めてソジュとビール以外のお酒を飲むこととなりました。Fellowが終始緊張していたのも印象的でした。

Day 5

Day 8, Dr. Jin-Young Park(Neon Orthopaedic Clinic)

午前中に3件の手術を見学させて頂いた後、午後は観光の時間を下さりました。平川先生のお好きな「梨泰院クラス」のロケ地を巡った後に、ロッテタワーで韓国の絶景を展望しました。スポーツ選手を多く診療されるPark先生からは、トップアスリートに対する治療戦略やリハビリテーション方針について教えていただき、大変学びの多い一日となりました。

Day 9, Dr. Chul-Hyun Cho(Keimyung University Dongsan Hospital)

早朝に高速列車で大邱に移動しました。Cho先生は「1時間以内に手術を終える」という明確な哲学のもと、手術室が1部屋にもかかわらず6件の手術を迅速かつ正確に進める姿を見学し、シンプルさと合理性を極限まで追求した手術に深い感銘を受けました。夜は大邱の肩関節外科医の先生方と会食し、大変盛り上がりました。また、この施設で親しくなった2025年GOTS Travelling FellowのDu-han Kim先生とは、後日東京でも再会し、観光しながら熱く語り合う時間を持つことができました。

Day 10, Dr. Sae-Hoon Kim(Seoul National University Hospital)

JSS Travelling Fellow経験者であるSae-Hoon先生のもとでは、筋前進術を併用した鏡視下腱板修復など4件の手術を見学しました。Neviaser portalを作成してsuprascapular nerve releaseを行い、さらにSSPにかけた糸をNeviaser portalから牽引してSSP下を剥離しやすくするReverse tractionの工夫を学ぶことができました。当日はYonsei大学のTae-Hwan Yoon先生、Joon-Ryul Lim先生も見学にいらしており、盛大な飲み会となりました。ふぐ料理をご馳走になり、ソジュの乾杯の回数はいつも以上で、非常に賑やかな一夜となりました。

左上:Day 8、右上:Day 9、下:Day10

Day 11, Dr. Yong-Girl Rhee(Myongji Hospital)

KSESのLegendであるRhee先生は、ご自身が開発したRhee handleを用いて腱板に経皮的に糸掛けを行っており、ポータルを作らずあらゆる方向から刺入できる革新的な手技を拝見しました。6件の手術の合間にはインド人Fellowの論文指導もされており、70歳とは思えない圧倒的な行動力と教育力に深い尊敬の念を抱きました。

Day 11

Day 12, Dr. Jong-Hun Ji(Daejeon St. Mary’s Hospital, Catholic University)

高速列車で大田へ移動し、Ji先生からは3件の手術を見させて頂きました。術野に入らせて頂く機会もあり、硬膜外針を使用したTrans-tendon Suture Bridge法は特に印象に残りました。帰路ではソウルの大渋滞に巻き込まれ、行きは20分弱だった道のりが、帰りはほとんど動かず2時間を要しました。深夜0時過ぎのホテル到着となりましたが、手配いただいた車が非常に快適で救われました。

Day 12

週末は平日の疲れを取りながらゆっくり過ごし、平川先生と1週目は明洞、2週目は江南を観光しました。
韓国では手術助手としてPA(Physician Assistant)が専門的に関わることで手術準備や進行が極めてスムーズに行われており、新しい製品やデバイスを積極的に導入する姿勢や、Research Nurseが外来患者データを整理し臨床研究を着実に進める体制など、医療・研究の両面で多くの刺激を受けました。また、どの施設でも先生方のお心遣いは想像以上で、手術見学やディスカッションは大変勉強になるものでした。夜には、毎晩の豪華な食事とソジュで温かくもてなしていただき、マッコリは高齢の方が飲むことがあるものの、あまり口にする機会がないという、意外な文化も学ぶことができました。韓国の肩関節外科医は国際的で英語も堪能なため、今後Traveling Fellowに参加される方は韓国語の学習よりも、韓国の飲み会文化やマナーを理解しておく方が有益かもしれないと感じました。
最後に、このような貴重な機会を与えてくださった日本肩関節学会の理事・代議員の先生方、温かく迎えてくださったKSESの先生方に心より御礼申し上げます。また、不在中に診療を支えてくださった医局の先生方、有給取得を許可してくださった病院関係者の皆様、そして家族にも深く感謝申し上げます。何より、今回の旅を通して支えてくださった平川先生には、多くの場面で助けていただき、終始楽しく充実した時間を共有させていただきました。心から御礼申し上げます。

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